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思いつきと気まぐれが良い響き。だからといって自由なわけでもないけれど。

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自分が特別だと思う時代は

一度でも疑ってしまったら

永遠に戻らない

 私には引き出しがある。

 頭の中に用意しているものと、色々大切なものをしまいこんでいる物と2種類あるけれど、どちらも時間が経つにつれごちゃごちゃしてきて必要な時にどうしても見つからなくて困ってしまう。そのくせにいらないと思って捨ててしまった後、さっきまで用意してたのになあ、あーあ。そんな気持ちになる。
 何のために大切にしているのかは私にもよく解らない。ただ――まあそういうことも役に立つ時が来るとは思っている。今はタイミングが悪くて上手くいかないだけで、本当に何もかもがどうしようもなくなった時に頼るのは2種類の切り札になるのだろうと。

「池田ってなんかいつも余裕あるって言うか、動揺するとかって無いやつだよね」
「なによそれ、冷たい人間だって言いたいわけー?」
 私はただ失敗しないようにしているだけだ。それはとても怖い。
「いや、そういうことじゃなくてさあ、頼りにしてるってこと。ほら、いつだったかさー、なんかクラスで揉めた事あったじゃん、生徒が書いた作文をみんなであーだこーだ批判する授業、っていうか小学生じゃねーし音読ってのがまずありえねーよね、んでなんか熱くなっちゃってさ、個人攻撃みたいになって喧嘩になった時に池田がバシッと解決したっていうか、だから」
 大したことはしていない。さっさと自分の発表を済ませてしまいたかったから〝そんなに大事な議論だったら後でしっかり話し合いましょう〟そんな様なことを担任に言ってみただけだ。結局その時の険悪な雰囲気はうやむやになってしまって、後からしっかり話し合う事なんて無かったけど。
「そう言えば池田の発表おもしろかったよね、えーと、節約の為にお金使うのは勿体無いってそんな話、他のみんなはいじめ問題とか税金がどうしたとかばっかでうんざりしてたからさ、うん、あんたは才能あるよ、なんかそんな感じする」
 勝手に自己完結するクラスメイトに聞くともなしに頷く。私の発表にそういう文章があったのは認めるけど、本題はそういうことじゃない。タイトルだって〝行動の天秤〟とつけた筈だけど。まあいい。伝わるのは一部分でもいい。全部伝わってしまったらそれはそれで厄介だ。もし――私の全てを理解する人が現れたらその時は確実に失敗だと思う。そうならない為に用意しているものがあるのだ。
「ちょっと聞いてるのー?ねえねえ」
 一人で喋り続けているクラスメイトに曖昧な返事を返しながら、呪文のように心の中で唱え続ける。どんな予定外の危険が訪れようと――

 私には引き出しがある、と。

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