セクシーロボットは風待ち
1.PM3:30のノクターン
乱暴に言ってしまえば、
「会いたい」
そんな気持ちが〝恋〟なんだよ
「園田さん、そんな事やってないで早く和未を幼稚園に連れて行ってね」
パリッとしたスーツを着こなした池畑さんが車を磨いている俺の横を通り過ぎながらからかうように言う。
「わかってるよ、それより急がないとまずいんじゃないか、いつもより10分くらい遅いだろう」
「え!?えーっと……何これ、この時計狂ってるじゃない!だからゼンマイ式のやつなんて要らないって言ったのにもー。あ、じゃあ行ってきます、和未ちゃんによろしくー」
彼女は携帯電話と腕時計を見比べながら小走りに通りに出て見えなくなってしまう。いつも通りの朝だ。俺には色々小煩いことを言うくせに余裕を持って出て行くのを見た事がない。新入社員の内から遅刻するわけにもいかないだろうから間に合えばいいけどな、そう思いながら車にワックスをかけ終わり玄関に戻る。
「準備できたか?」
奥の部屋に声を掛けると、靴下を履いている途中だったらしく片足立ちでぴょんぴょん跳ねながら和未が出てきた。
「おいおい、危ないぞ。それに靴下、色違いだぞ、それ」
言われて足元に視線を落とした和未は〝えへへ〟とにやけたと思ったらすぐしかめっ面に変わって、
「いいの、これがいいんだから!はやくつれていって」
と言ってこちらへやって来る。俺の方を見ないで靴を履き終わるとさっさと車に乗り込んでしまう。掛ける言葉も見つからないまま後に続いて運転席に乗り込みながら、こんな時母親がいたら何といって注意するのか困惑する。正直な話、彼女にどう対応していいのか解らないのだ。発進させた車の中、会話の無いまま、昨日はいつも通り風呂に一緒に入ろうとしたら「もうひとりでおふろはいれるからおとうさんいらない」と、結構ショックな事を言われた事を思い出していた。これが反抗期と言われるものであるのは理解できるが感情はそんなに簡単ではなく、間違いなく昨日から俺は、落ち込んでいるのだ。
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